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海外投資行動指針

趣旨

昭和48年6月に発表した「発展途上国に対する投資行動の指針」は、わが国企業の発展途上国向け直接投資における企業行動のあり方についての指針(ガイド・ライン)として、わが国企業によって十分に留意されるところであった。

しかし、近年わが国企業の海外直接投資は、発展途上国のみならず、欧米など先進国向けにもとみに行われ、円滑な投資行動の要請は、いまや発展途上国にとどまらない状況にある。わが国企業の海外投資に当っては、発展途上国向け、先進国向けを問わず、それが投資先国によって好意的に受け入れられ、その国の成長、発展と国民福祉の向上に役立つような形ですすめられなければならないことは言をまたない。

適用地域を発展途上国に限定した旧指針においても、この趣旨は十分に強調されたところであるが、旧指針の発表後、今日に至る間における国際環境の変化ならびにわが国企業の投資行動の多様な展開を踏まえ、旧指針について見直しを実施することとした。

今後の世界経済においては、海外投資を含む企業活動の国際的展開がますます活発化し、特にそこでのわが国企業の役割の増大が予想される。海外投資は、各国間の経済的相互依存関係を緊密化させ、当事国双方に多大な便益をもたらすなど、世界経済の活性化に資するものである。しかし、一方では投資先国の政治、経済、社会、文化等の諸局面に様々な緊張や摩擦現象をもたらす可能性を有しており、加えて投資国自体の国内雇用等への影響も指摘される。海外投資のこのような側面に注目するとき、わが国企業としては、自由競争の原理を基本としつつも、それが適正な節度によって支えられた企業行動であることが是非とも必要と考えられる。

海外投資に当って、わが国企業が以下の指針の実践に努力することを切に期待するものである。なお、雇用問題等、わが国の国内問題についても併せて慎重な配慮が要請されることを付言したい。

基本的姿勢

第一

わが国企業の海外投資に当っては、それが投資先国に歓迎されるものとしてそこに定着し、長期的な観点に立って企業の発展と投資先国の経済・社会政策とが両立する方向で進めるとともに、国際協力の一環として投資先国の社会に融け込むよう、その経済、社会との協調、融和を図りつつ行うという基本的姿勢を貫くこと。

現地会社の主体性尊重

第二

わが国企業の海外投資に当っては、現地会社が投資先国の法に基づく独立の法人であることをよく認識し、その主体性を尊重して行動すること。また、それが合弁事業の形態をとる場合には、合弁事業の一方の当事者として、その立場に見合った責任を果たすことを原則とすべきこと。

相互信頼を基盤とした事業活動の推進

第三

わが国企業の海外投資に当っては、長期事業方針の明示、適正な労使関係の確立等の適切な配慮を行うとともに、現地会社の事業活動の内容を投資先国において正しく紹介することにより、投資先国社会の理解を得るなど、投資先国との相互信頼を基盤とした事業活動の推進に努めること。

また、発展途上国等で自国資本の育成の要請があるところでは、適当な時期に投資先国の投資家等に資本参加拡大の機会を提供するよう努めること。

良好で適正な労使関係の確立

第四

現地会社の経営に当っては、良好で適正な労使関係を確立するため、投資先国の労働組合組織や労働慣行について十分な認識と理解を深めることに努め、また労使間に誤解等が生じないよう、情報や意見を交換するなどして、意思の疎通を図ること。

雇用、登用の推進

第五

投資先国における雇用機会の拡大に資するため、現地会社における現地人従業員の雇用、登用を積極的に行うよう努めること。

また、従業員の労働条件についても、投資先国の事情を十分配慮するとともに、安全衛生を確保するための労働環境の整備に努めること。

教育、訓練の推進

第六

現地会社の従業員の職務能力向上のため、社内における教育、訓練を行うとともに、必要な場合には、わが国をはじめ外国への研修派遣、留学等を実施し、技能、技術(経営、管理技術を含む)の習得の機会を与えるよう努めること。

とくに発展途上国など、技術移転を必要としているところでは、教育、訓練に際してそのことに十分配慮すること。

派遣者の自主性尊重

第七

わが国企業は、現地会社の主体性の尊重とともに、現地会社に対する派遣者の意欲と責任意識の確立を図るため、現地会社における派遣者の業務上の自主性を尊重するよう努めること。

派遣者の選定、教育

第八

海外投資先への派遣者の選定に当っては、協調性、意欲、能力、経験等の適性に配慮するとともに、投資先国の言語、社会、文化等、海外実務以外の学習を含めた適切な事前教育、訓練を行うよう努めること。派遣者が家族を帯同する場合には、可能な限り、家族に対しても同様の事前教育の機会を提供するよう努めること。

派遣者の派遣期間、生活基盤整備

第九

派遣者の派遣期間については、投資先国の諸般の事情を考慮した期間を設定し、そのための条件を整備するとともに、派遣者とその帯同家族のための生活基盤の整備を図るよう努めること。

投資先国産業との協調

第十

わが国企業の海外投資に当っては、投資先国の経済秩序を混乱させることのないように投資先国産業との協調を図り、特定の地域、産業あるいは時期に投資が集中することのないよう努めるとともに、現地会社の事業活動においては、投資先国の商慣習、流通機構を尊重すること。

また、長期的な観点から国際分業の確立、投資先国の国際収支の改善、産業構造についての政策目標の実現等に資するため、現地会社が使用する機械、設備、原材料、部品等については、できるだけ投資先国で生産されるものを調達するよう努めること。

技術移転の促進

第十一

投資先国産業の技術水準の向上に資するため、とくに発展途上国など、技術移転の要請のあるところでは、現地会社に対してはもとより、関連する地元企業に対しても機械、設備、原材料、部品の発注等に際して技術指導を通じて、可能な限り技術移転に努めること。

再投資の促進

第十二

投資先国の経済の発展と安定に資するため、わが国企業はその現地会社の利益等をできるだけ現地会社の拡充、周辺関連産業の育成等のための再投資に向けるよう努めること。

投資先国社会との協調、融和

第十三

投資先国の社会との協調、融和を図るため、以下の事項に留意すること。

  1. 現地会社の理念、事業活動、投資先国への貢献等について、投資先国社会の正しい認識と理解を得られるよう積極的かつ適切な広報に努めること。
  2. 投資先国の生活・自然環境の保全に十分努めること。
  3. 事業施設、広告看板等の建造物の設置に当っては、投資先国における社会通念および公共性に十分配慮すること。
  4. 投資先国における教育、福祉および文化面への貢献に努めること。
  5. 投資先国における地域社会との融和に留意し、投資先国の業界団体、地域団体等には現地会社も積極的に参加するよう努めるとともに、投資先国における日本人経済団体もまた現地の諸団体ならびに経済関係者、学識経験者等との幅広くかつ親密な交流を促進すること。

以上

社団法人経済団体連合会会長斎藤英四郎
日本商工会議所会頭五島 昇
社団法人経済同友会代表幹事石原 俊
日本経営者団体連盟会長大槻文平
社団法人日本貿易会会長三村庸平
社団法人関西経済連合会会長日向方齊
社団法人日本在外企業協会会長永田敬生

昭和62年4月1日

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